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そうだ、大事なことを忘れていた。ぶつかった時、根津先輩はぶつかったことより目を合わせないことに怒っていたのに、俺は前髪を下ろしたままだ。 「前髪……!」 「あー、いい!上げなくて」 額に持っていった手の上から抑えられ制止される。 「事情があんだろ。もう気にしなくていい。忘れろ」 「はい。……ありがとうございます」 良かった。根津先輩が居る時は他の人の前でも目を晒さなくてはいけないところだった。 「なになに?触れたら駄目系?」 「うるせぇ入ってくんな」 「えぇ……」 これで気がかりが減ったと、ほっと胸をなでおろしていると、ふと肩を後ろに引かれる。 「大丈夫か?」 健助だ。先輩たちが来てからずっと黙って見守って(?)くれていたみたいだけど、大丈夫ってなんのことを言っているのだろう。 とりあえず頷いた。 「悪い、目塞いだままだったな」 「ですね」 根津先輩に対する健助の返事が硬い感じがするのは気のせいだろうか。たった3文字なのに語気が強い。同じことを思ったのか、野中先輩が空気を変えるように手を叩いた。 「んじゃそろそろお暇しようかね?まだ部屋残ってるし」 「だな。じゃあな堰、宗弥」 「うちの根津くんがお騒がせしました~」 「うるせえ。行くぞ」 野中先輩が手を振ってくれたので、同じようにして見送った。あの人は空気が読める人みたいだ。

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