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「桐嶋!ちょっと……待っ」
速い!腕を掴まれたまま走っているのだけど、引っ張る桐嶋の足がとても速い。俺も遅くはないはずなのに、足がもつれそうになる。こんなに早くフラグ回収したくない。
「え?なんてー?って、うわ」
そして桐嶋が振り返った瞬間にもつれた。掴まれた腕で繋がっているので俺が転んでしまうと桐嶋も転ぶ。そう思って踏ん張る、より先に腕を引かれた。
「あっぶね、ごめん堰!速かったな。大丈夫か?」
「うん、セーフ……ありがとう」
引っ張られたことで桐嶋と距離が近い。あまり身長が変わらない、俺より少し低いぐらいなので、もう少し近ければ顔面衝突したかもしれない。目が合って桐嶋が満面の笑顔になった。
「でもお前も意外に足速いんだな!身長も近いし、二人三脚やったら優勝間違いなしだぜ」
つられて笑ってしまったけど、ついて行けてなかったから転びかけたんだぞと言えば良かった。体育祭の種目に二人三脚がありませんように。
「んじゃま、堰が転ばないようにほどほどの速度で行きますか」
「そうしてくれると助かる」
宣言通り少し抑えめに走り出すけど、桐嶋は俺の腕を離してくれないまま。これが危ないんだけどな。
「桐嶋、腕を」
「なんてー?」
「腕を離して」
「やだ」
やだって……。仲間なんだから別に逃げたりしないのに。
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