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後方で警察側の確保の声と、泥棒側の無念の声が上がっている。ちらりと振り返ってみると、連携はあまり取れていないのかそれぞれ1人確保したら引き上げているように見える。思ったよりまだ焦らずに済みそう。 「桐嶋」 たぶん大丈夫、と伝えたかったのだけど、助けを求めているようにでも見えたのか目が合った瞬間背中への圧力が増した。 「はいちょっとごめんね、押すよー!」 「桐嶋!そんな強引に……っ」 軽い感じで断りを入れながら数人巻き込んで門に押し込まれた。勢いよく飛び出す感じになったけど、将棋倒しになるほどの人数ではなくて良かった。それに無事を確認するまでもなく、みんな門を抜けてそのまま走って行ってしまう。元気で本気だ。 「堰、見送ってる場合じゃねーぞ」 「ごめん」 怒られた。慌てて足を動かすと、また腕を掴まれる。もうなんだか桐嶋に捕まった気分になってきた。 「ここさ、真ん中に食堂があって、4つ寮があんじゃん?逃げやすいと思うんだよな」 「ああ、確かに」 「でもってこっち」 回り込んだ寮の裏側は遊歩道のようになっていて、さらに奥は木や草が生い茂った公園らしきものがあった。自室の窓から目にはしたけど、あまりちゃんとは見ていなかったなあ。 「隠れられそう」 「だろ?アスレチックみたいなのもあるからついでに遊ぼうぜ」 この状況で更に遊ぶんだ、強い。

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