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「牢屋ってどこにあるんですか?」
右腕に根津先輩、左腕に葉桜と両腕を塞がれた状態で歩きながら聞いてみる。
「体育館」
先輩は振り向くことなく単語で教えてくれた。グラウンドの横、また校舎の北西にある渡り廊下の先の体育館。広さもあって、周囲と隔絶できる。なるほど、使いやすそう。脱走さえできれば泥棒側も逃げやすいとは思う。
納得していると葉桜が身を寄せてきた。薄桃色のウェーブがかった肩まで伸びる髪、長い睫毛。身長も俺の口元ぐらい。
「先生から聞いてないんですか?」
「うん。あんまり教えてくれなかった」
えー、と呆れた様子から察するに、他のクラスは教えられているみたい。助けを要請した桐嶋も俺と同じクラスだから当然場所を知らないのだけど、他クラスに聞けば大丈夫ということが分かった。案外すぐ来てくれるかも。
「ところでどうして敬語?」
今まで先輩を交えて話していたからで、そのうちとれるだろう、と思っていたけどそんなことはなかったので思わず聞いてしまった。はっとしたように口に手をやる葉桜。
「あっ、ほんとだ、癖みたいなもので」
「そうなんだ」
「ゆーやくんが言うなら、ため口で喋ります」
にこにこと言ってくれるけど、別に敬語だからよそよそしいとかそういうつもりで聞いたわけではないので。
「話しやすい方で良いよ」
「うふふ、ありがとうございます」
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