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「ゆーやくんは、足は速いんですか?」 「普通だよ」 身を寄せるようにして話す葉桜は声も小さめで、内緒話をしているような気分。 「たけるくんが助けてくれたら、付いて行っていいですか?」 断る理由もないので頷くと、本当は逃げ足は速いんです、と教えてくれた。さっきは先輩が怖くて足が震えてしまったらしい。 「あ、堰くん」 そんな話をしながら公園を出て寮の玄関側に回ったところで、間広先輩に声をかけられた。腕を引かれている様子を見て、連行されていると気づいたようだ。 「ありゃ、遅かったか。あんまり足速くなくってさ、ごめんね」 「いえ。……そっか、間広先輩は味方なんですね」 確かに副寮長と、長が付く。そう考えると思いの外味方の人数も多いのかもしれない。 「うん、そだよ!後で手助けしに行くね!」 と、綺麗なウィンクをくれた後、俺から視線を前に移した間広先輩が「あ!」と声を上げた。同時に根津先輩がうるさそうに耳を塞ぐ。 「堰くん捕まえたの根津なの?!うちの寮生を!こら!無視するな!分かったあれだな、かわいこちゃん2人も連れて照れてるんだ。ずっるい」 「……うるせぇ。つかオレも藤寮だっつの」 藤寮……ちょうど目の前の、俺や根津先輩、間広先輩が暮らす寮のことだ。他の寮も萩、柊、梅とそれぞれ季節の花の名が付いているみたい。 「お前らも止まってねぇでさっさと行くぞ」 急かされたので間広先輩に会釈をしてから、牢屋に向かうべく足を動かす。無理に引っ張ったりはしないあたり、本当に初対面の時の根津先輩は機嫌が悪かったんだなあ、と思う反面、あの時に何があったのか少し興味が湧いてしまった。

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