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敷地の両極端と言っても良い、寮(の公園)から体育館への移動はかなりのタイムロスになっていた。寮から校舎まで10分ということは、15分から20分はかかってくる。
携帯を持ってこなかったので正確な時間が把握できていないのだけど、今は9時30分ぐらいだろうか。だとすればお昼まで残り2時間30分。
「うーん、これは」
牢屋という名の体育館に着いて第一声が唸りになってしまった。思った以上に、仲間が捕まっている。半数以上居るのでは。
「楽勝かよ」
ぼそりと根津先輩が呟いたと思ったら、役目を終えたとばかりに走って行って、3分ぐらいでもう誰かを捕らえて戻ってきた。勝負事好きなのかな。楽しそう。
「このペースだと勝つの難しそうですね」
適当な場所に腰を下ろして待機していると、隣で体育座りする葉桜が感想をもらした。
確かにこのペースでいくと1時間もつかどうかというところだ。逃亡者の人数が減ることで、1人あたりの警察の配分が増えて更に難度が上がる。
「助けが来たらペースを崩せるけど……」
例えば10人が一気に別方向へ脱走したら、誰が誰を追って誰が残るのかで一瞬混乱が生じ、追って行った分だけ見張りが減って次の助けが入りやすくもなる。
「助け……来れるのでしょうか」
出入口は左右6、後方に1と7箇所開放されてはいるけれど、全てに1人2人見張りが立っているし、散らばって内と外両方に5人程度見廻っている人が居る。
複数人、犠牲やむなし、だったら可能かな。もしくは味方のなんらかの協力。
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