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うめく俺を楽しそうに見て、先輩が視界の外に消える。首を舐められて恐怖を感じた。なんだろう、この人は性的な危機より暴力的なそれの方が勝る。食いちぎられそうな恐怖。 「急に心臓が速まったな、ようやく怖くなったか?」 脇腹から肋、胸へと移動してきた手が心音を押し潰すように鷲掴んだ。ずっと、一々怖い。 襟元から強引に左右に引っ張られてシャツのボタンがちぎれ飛んだ。裁縫は得意じゃないのに。強制的に全開になった上半身を先輩の手が這い、舌が這う。反応せずにいると、まるで心臓をくわえるようにがぶりと胸に歯型を残された。 「うっ……!」 「色気ねー声」 そんなほとんど肉の無いところを噛まれて、どう色気なんて出るというのか。泣くほど気持ち良くなんて冗談じゃない、わざと痛くされている。痛いうえに性的に消費されるなんて最悪だ。 がぶがぶと何度も歯型を残しながら、べろりと胸の先を舐められた。鳥肌が立つ。気持ち悪い。片手で反対側の胸を執拗に、別の手は尻を撫でている。 「仕方ねーな」 不快感に奥歯を噛んでいると、不意に手つきが優しくなった。掠める程度の強弱。アイスクリームをくわえるような気軽さで、傷口を舐めるように慎重に舌が這う。 「……ふ、ぁ」 「ちゃんと出るじゃねーの」 おかしそうに漏れた笑い声。羞恥で顔に熱が集まった俺に追い打ちをかけるように下半身に手が伸び、チャックにかかる。

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