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ふと視界の障害物に、そういえば眼鏡ずれていたんだっけな、と場違いなタイミングで気が緩む。
根津先輩は苦虫を噛み潰したような表情で体の力を抜いた。何にそこまで怒っているのか。
「根津……、またお前か」
側頭部に手を当てながら、殴られた先輩が起き上がってくる。名札が見える位置に見つからなかった(そもそも付けていない?)から名前が分からなかったのだけど、さっき根津先輩に呼ばれていたので、無道だと判明した。
「こっちのセリフだクソが。何したか分かってんのか」
「おいおい、今更だな。なんでそいつだけ庇う?あ?」
険悪な空気の中根津先輩が俺を庇うように背に追いやった。今更……そいつだけ……言葉が引っかかる、こんなことを以前にも?葉桜の顔が浮かんでぞっとした。
「間に合ったのか」
ふと別の声が会話に割って入って、一斉に出入口に視線が集まった。知らない先輩?いや、見たことがある。生徒会長だ。
「おせーぞ安佐凪(あさなぎ)!そんだけかかんなら先公連れて来いよ」
「無茶を言うな。鍵を取ってくるだけでも手続きは必要なんだ。結局開いていたようだが」
先輩のはずの、しかも生徒会長に根津先輩はタメ口を使った。当たり前のように受け入れられているようで、それには触れず部屋を見渡した生徒会長が「それで?」と冷静に状況説明を求める。
「はっ、わざわざ生徒会長がお出ましとはなあ」
「助けを求められた時偶然居合わせたものでね。無道、これはどういうことかな?」
「見た通りだろ。俺がそこの眼鏡くんを襲」
「ぶん殴られました」
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