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全開になってしまうシャツを諦めて、上のジャケットのボタンを全て止めながら、何か忘れていることに気づく。 「そういえば、誰かここから出て来ませんでしたか?」 蕗口の姿が見当たらない。根津先輩が助けに入ってくれた時には居たはずだ。生徒会長は一瞬考えてから首を振った。 「いや、見ていない。共犯者か?」 「あ、いえ」 根津先輩も誰か居たか?と首を捻っている。真っ直ぐ無道先輩の方に向かって来たから見えていなかったのかもしれない。知り合いのはずの無道先輩は不機嫌そうに顔をしかめているだけで、蕗口のことには無反応だ。あの短時間でどこへ?気になる、彼には顔を見られた。 「堰、立てるか?」 「大丈夫です」 と、立ち上がって見たもののよろけて根津先輩に支えられる。困ったな、どうやら足の力も入りにくいらしい。 「無理するな」 恐らく、助けを呼んでくれた葉桜が外で待っているはず。けれどこのまま出たら心配させてしまう。 「……先輩お願いがあるんですけど」 「なっ、なんだ?」 「牢屋に連れて行ってくれませんか?」 「はあ?お前はまた……!」 さすがに今回は納得しねーぞ、と割と本気で怒られて慌てて否定する。 「フリでいいです。手を握ってもらっても不自然じゃないように」 それを先に言えと結局怒られたけれど、手は握ってくれた。

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