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「先輩のおかげで未遂だったので」 大丈夫ですよ、と笑ってみる。先輩はずっと渋い顔をしている。 「お前は弱いのかと思ったが、今日半日で分からなくなった」 「弱いですよ。手が震えているの、先輩気づいているでしょう」 大丈夫と言ったくせに、震える手は先輩が抑えてくれないときっと葉桜にもバレていた。大丈夫なフリをできるから大丈夫、容姿が原因ではないから引きずりはしないだろうって、その程度。 「守ってやりたかったんだが、いつも一歩遅くてごめんな」 その言葉で渋い顔は自責の表情だったのかと理解した。初対面のあれを気にしてくれているのかな。むしろ忘れてほしいんだけどな。 「先輩はヒーローなのかもしれませんね」 「遅れて来るってか。不名誉だな」 遅かろうが早かろうが助けてくれたのに変わりない。本当に、危なかったんだ。触られた感触を思い出して鳥肌が立った。似たような被害経験はあるけれど、暴力と性暴力のセットは中々無い。しかもそこへ至った大した理由はなくだ。あの人は怖い。 恐怖が顔に出そうになって、頭を振った。 「ここからは1人で行けます」 校舎に入ったら保健室まですぐだ。ここまで来たら道中で警察チームに狙われることはないだろう。保健室は逃げ込み禁止だから、怪我人だと分かってもらえるはず。 それにこの先は、先輩とぶつかった場所だ。 「……そうか。戻るって言ってたが無理はするな。あと何かあったら呼べよ」 「先輩は敵でしょう?」 「あのな、このゲームに限った話じゃねぇからな」 真剣に言われてしまって頷くしかなった。

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