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あとどのくらい時間が残っているのだろう。ただのドロケイのはずが、とても長く感じる。 校内を走り回る音が聞こえてくる。外からは落胆や歓喜の声が。みんな本気だから怪我人も多そうなものだけれど、外から窺う保健室は静かだ。 「失礼します」 ノックをして引き戸を開ける。と、意外な人がそこに居た。 「侑哉……?」 「あれ、健助」 健助が緋吉先生と向かい合って座っていた。姿を見ないと思っていたらここに居たのか。怪我かな? 「ああ堰くん、どうしましたか」 緋吉先生が健助からこちらに体ごと意識を向ける。診察の途中ではないかと聞けば、問題ないと2人ともに促された。 「カッターシャツの予備って置いてたりしますか?」 「ありますが……」 なぜそんな物を?と言われる前にジャケットのボタンに手をかける。ぎょっとされたけれど、外して前をはだけるうちに険しい顔に変化していく。 「この有様で」 「シャツだけじゃないでしょう。怪我をしているね?」 見えないようにしたつもりが分かってしまうらしい。隠しても仕方がないとシャツの左側をめくった。あ、腹が青くなってる。 「……誰だ、相手は」 視認すると押し黙った先生の代わりに健助が唸るように聞いてくる。 「聞いてどうするの?」 「殴る」 そうと分かって言えるわけがない。 「言わない。大丈夫、根津先輩や生徒会長に助けてもらったから見た目ほどひどくない」

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