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「とりあえず傷を診ましょうね。そこへ座って」 優しいのに有無を言わさない先生の声色に、健助と入れ替わりで大人しくイスに座る。 「痛みますか?」 「少し」 触診で何度か腹を押されて痛みの有無を答える。どうやら内臓や骨は問題なさそう。あとは消毒と、ガーゼや湿布を貼っておしまい。先生は一旦カッターシャツを取りに席を離れて奥へ行く。 「何があった?」 「うーん、たぶん運が悪かったんだと思う」 改めて聞かれて、そのまま話すのは気が引けたので運で片付けたら納得がいかなかったらしく、健助はフードの上からがしがしと頭をかいた。言いにくければ流してくれと前置きの後、未遂か?と聞かれたので素直に頷く。こんなところに噛み跡があればただの暴力ではないと分かってしまうよね。 「こんなことなら、初めから側に居れば良かった」 「大丈夫だって。健助見たら安心したし」 事実、保健室に入ってから震えがおさまった。入寮以来彼の声を聞くと安堵するようになっていたのが大きい。それに、理解してくれている緋吉先生も身内に近い安心感がある。 「相手のことは生徒会長が良いように対応してくれるはず」 はっきり任せろと言ってくれたあの人は信頼できると感じた。きっとあれが最適解。 「安佐凪くんが対応したのならその後は問題なさそうですね」 先生がカッターシャツを手に戻って来た。先生からも信頼されているなんて、さすが生徒会長だ。 「君のケアは……必要ないと言いそうな顔ですね。少しでも辛いと感じたらいつでもいらっしゃい」

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