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「失礼しました」 ちょうど怪我人が入って来たこともあり、俺たちはすぐ保健室を後にした。中からは容赦なく消毒液をかけられる怪我人の悲痛な声が聞こえてくる。 「じゃあ、行こっか」 返事は無く、すっと目の前に手が差し出されたのでとりあえず握手してみた。お互い頑張ろう、みたいな。 「違う……危ないから繋いでて」 あ、そっちのパターンか。このゲーム開始早々桐嶋に手を握られたまま走ったことを思い出す。なんだろう、みんな心配性なのかな?1人にしたら転びそうなほど鈍くさく見えるのかもしれない。確かに器用な方ではないし、と逆の手で握り直す。 「はい」 「素直……」 「うん?もしかして弟くんは素直じゃない?」 他の人はともかく、健助が心配するのは俺を見て弟くんを思い出すからだ。反抗期だから、と頷いた彼は少し寂しそうで、完全にお兄ちゃんモード。中高で小さい時のままな関係性の方が珍しいだろうけど。 「ほら行こう?お兄ちゃん」 少しからかってみたらものすごく挙動不審になった後顔を背けられた。珍しい。そのまま歩き出したけど絶対前見えてない。 「お兄ちゃん前見ないと危ないよ」 「……止めてくれ」 「あはは、ごめん」 でも危ないので、手を引いてもう一度前を見るよう促す。 「どこへ逃げようか」 「あと1時間も無い。疲れも出ている頃だ」 警察側も持久力が保たないだろうし、無理をするなと釘を刺されてもいるから、見つかった時都度逃げるので良いだろうってことかな?

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