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大量脱獄の末、そのまま逆転されることなくゲーム終了の放送を迎えた。どこからともなく喜びと賞賛の拍手が巻き起こったのは温かい気持ちになって感慨深い。数えるまでもなく1年泥棒チームの勝利だけれど、グラウンドに集まり結果発表と終了の挨拶を聞いてからの解散となった。 昼食時間は15分延長され、一斉に食堂へと移動し始める。並木道を抜けるまではそこそこに道幅が広いとしても、寮の門が狭いので混み合うだろう。ちょうどドロケイの頭の方で俺たちが詰まったように。 「少し待とう……」 「懸命だな」 人の減った目立たない端の木陰に立った時、無意識の独り言に返事があった。視線を移せば、そこには生徒会長。 「少し良いか?手短に済ませる」 「はい」 「奴の処遇が決定した。1ヶ月の停学だが不服はないか?」 手短と言った通り即座に入った本題は、奴こと無道先輩のこと。予想していたものより随分と良い知らせだ。ただあれから1時間ぐらいしか経っていないのに処遇が決定したと聞いて、安心より何より驚きが先に来てしまった。2、3日、良くて丸1日はかかるだろうと思っていた。 「いえ……もう決まったんですか?」 「多少強引に」 会長がほんの少し悪い顔をしたので多少どころではないみたい。ツケを回収すると言っていたし、よほど余罪があったのだろう。 「新年度が始まったところだが奴には今日にも寮を出てもらう。保護者にも連絡済みだ。安心すると良い」 「はい、ありがとうございます」 これで話は終わりかと思ったけれどそうではなく、これは余談だが……と会長は言いにくそうに続けた。 「今回の件は実行委員の責任もある。トラブルを回避するための助っ人制度でもあったんだが、先生たちがほとんど機能しなかった。すまなかった」

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