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特別教室を使うのか。それとも準備室かな。金剛先生は公民の担当だから。いや、公民の準備室って4階にはなかったような。
「やっぱここだな」
じゃらり、先生のスラックスのポケットから出てきたのは鍵の束。迷わずそのうちの1本を選んで目の前の鍵穴に差し込む。ここは視聴覚室。
「準備室じゃないんですね」
「今あっち1人分しかスペースないからな」
なるほど、と頷いて鍵の束を見つめると、言いたいことが分かったのか先生はにやりと笑った。
「よく使うとこのスペア。ほぼダミーだが」
それは良いのかなあ、本来職員室につど要返却な気がするんだけれど。視聴覚室ってそんなに使うものなのかもよく分からないので、そうですかと返す。苦笑いされたから冗談だったのかもしれない。
「まあ入れ」
「はい」
適当な席に並んで座り、言いにくければ黙秘でも構わない、といつか聞いたようなセリフを前置きに先生は本題に入る。
「オリエンテーションで暴行被害を受けたそうだな」
「ああ……はい」
それか、と納得の声が出て失礼な感じになってしまった。どう受け取ったのか「済まない」と先生の目に力が入る。
「あ、いえ!その件は解決済みなので」
「……そうか。いや、本当にそうか?」
「え?」
例えば、と先生が身を乗り出す。様子を窺っていると膝に置いた手に手を重ねられた。するりと内側に指が入ってくる。
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