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週明け、配られた席表と部屋割りのプリントを前に俺は呆けていた。部屋割りの方は桐嶋と俺、知らない他クラスの生徒5人、嬉しいことに健助も居た。それと……蕗口。 バスの座席の方も、隣に蕗口。 ……フラグを回収してしまった。 「堰?ぼーっとしてどうした?」 「……なんでもない」 桐嶋の問いかけに、なんでもなくないかすれた声が出た。 今まで何も言ってきていないから、今更どうこうなるとは限らない。それに彼はあの時「この人に逆らえない」と言っていた。つまり、先輩が居なければ普通に仲良くしてくれる可能性だってあるはずだ。 ただやっぱり問題は素顔を見られたことで、彼が同室となると、コンタクトの着け外しのタイミングさえ気を付ければ良いという考えが打ち砕かれる。 「堰、本当に大丈夫か?嫌いな奴でも居た?」 「ごめん、ちょっと考えごとしてた。気にしないで」 「珍しいな。なんかあったら言ってくれよな!友達なんだから!」 頼もしい。キラキラして見えて眩しい。 「ありがとう」 今考えたところで仕方ないし、小包装のマスクでも買い足しに行って備える方向に持っていこう。 志常には食堂に隣接した売店がある。朝は6時から夜は22時まで、軽食から日用品までいろんな物を売っている。アイマスクとか、さすがに無いかな。 売店に行くと伝えたら桐嶋は付いてきてくれた。残念ながらアイマスクは無かったけれど、当初の目的通りマスクと、ついでにおやつと飲み物を買ってきてそのまま公園で遊んだ。

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