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桐嶋と遊んで気が紛れたように思えたけれど、食堂で夕ご飯を食べ終え、健助と部屋に戻る途中でぼーっとして2回ほど柱や下駄箱に激突した。お互いそんなに話す方ではなく部屋以外では沈黙の方が長いのもあって、つい考え込んでしまったのがいけない。 途中からは腕を掴まれて歩いた。あの時は手を握っていたけど、引かれて歩くという点でオリエンテーションの時みたい。 「体調が悪いのか?」 部屋に入るなり額に手を当てられる。平熱なのはそこから伝わるだろうけれど。 「ううん、元気」 「元気では、ないな。何かあったか?」 否定されてしまった。じっと見下ろされて、気にかかることがある、と言ってしまいたい衝動に駆られる。協力してくれる人が居たならトラブルを回避する確率が上がり、蕗口との接触自体を避けやすくなるのは明らかだから。健助は恐らくふたつ返事で協力してくれるだろう。 「……売店行ったんだけどアイマスク置いてなくて。慣れない勉強したから目が疲れたみたい」 正直に言えなかった。 思い返しても蕗口に悪意はあまり見当たらなかったし、一方的な印象を植え付けるのも良くないと思ったから。あと、余計な心配をかけたくない。俺のことで気を回さず、普通に楽しんでほしい。 「ああ、ホットアイマスクで良ければ持ってる」 誤魔化すために出したけど嘘ではない理由が、まさかの良い結果を呼んだ。売店に無かったものを健助が持っていた。 「えっ、良ければ2個ほど分けてほしい」 「良いぞ」 これでさっきまでよりいくらか気が楽になったかもしれない。

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