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まさかね。と、自分の考えを否定したちょうどその時。 「ねー、何の話?」 いつの間に回り込んだのか俺の後ろからひょっこり現れた蕗口に、前川が気まずそうな顔をした。 「えーと、恋バナ?」 「嘘つけ」 ふっと鼻で笑った気配と前川の引きつった顔で背後の様子が分かった。聞こえてたんじゃないのか。 「蕗口は何しに?」 「ん?手伝いに来ました~」 そう言うと伸びてきた手が俺の持ってるカゴを攫おうとするので、やんわり断る。俺じゃなく西岡の方を手伝ってあげてほしい、と振り返ると、つられて西岡を確認した蕗口は素直に「なるほど」とそちらへ向かった。 「……びっくりした……」 見送って向き直ると前川が口を引きつらせている。 「そんなに?」 「うん、てか今ので察したわ。お前怖ぇのに好かれたんだな」 同情のような、哀れむような表情のあと、ぼそりと「目が笑ってなかった」と呟いた。蕗口のことだろうか。振り返った時には普通の顔だったと思うけれど。ドンマイ、と謎の励ましをもらった後は会話もなくみんなの所へ戻る。 これが原因か、以降キャンプ中に前川と2人になることはなかった。 「おかえりー。堰くん、チャッカマンある?俺ら炭もらってきたから火付けるわ~」 「うん、あるよ」 残ったメンバーで火起こしの準備をしておいてくれたらしい。かまどに木炭や新聞紙が重ねられている。 「よっしゃ、早速作るか」 桐嶋が洗ったばかりの手でガッツポーズを取ったところで、蕗口と西岡が戻ってきた。

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