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ああ落ちるな、と着地する準備をするまでもなく、両側から体を押さえられて足が丸太に戻る。伸ばしかけた右腕を蕗口が引っ張り、傾いた上半身を健助が押し戻してくれていた。
「あっぶね」
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう2人とも」
ちょっと大げさかなあと思うのは、丸太の高さがせいぜい俺の身長より低い程度なのと、地面が柔らかそうな土だからだ。
揺れた原因の勢いよく丸太に飛び乗った他グループの子は、そのままの勢いで地面に落下しているけどグループの仲間と爆笑するぐらい元気そう。
「怒ってくるか?」
「いや、いいよ。それより健助すごいな」
縄ではなく縄が固定された柱の方を掴んでバランスを取っていて、落ちかけたことよりそっちに驚いてしまった。そこに届くことがまずすごいし、傾いて不安定な丸太の上で足は触れていただけのようなもので、ほぼ片腕の力で俺と自分の体重を支えたことになる。
「やっぱり腕立て?懸垂?」
「さあ……」
筋トレメニューを参考にさせてもらおうと思ったけれど気の無い返事が返ってきた。引かれちゃったかな。
「とりあえずこっちおいでよ」
蕗口に促されて丸太から降りる。続いて健助が降りた直後に、また後ろのグループがわざと飛び乗って丸太を揺らした。
「たぶんそのうち痛い目見るだろ。あいつら追いつかないうちにさっさと進もう」
呆れたような蕗口の言葉通り、見回りの先生に叱られたとは後で聞いた話。
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