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その時、突風が吹いて前髪をさらった。眼鏡越しに桐嶋と目が合った直後、今度は幕のように下りてきた前髪が眼鏡を越えて数本目に入った。桐嶋がなにか言いかけた気がしたけれど、先に俺の口からもれた「いたい」。
「えっ、大丈夫か?」
帽子を持ってくるの忘れたことを後悔しながら髪を払う。被ってたら抑えられただろうにな。
「ん、髪の毛入っちゃった。赤いのも気になるし、目洗ってくるよ」
「付いて行こっか?」
自由行動は単独での動きを制限されるものではないので一緒に動く必要はないし、違和感はあっても目はちゃんと見えているから、付き添ってもらわなくても問題ない。
「見えるから大丈夫。ありがとう。桐嶋は遊んできて」
「そか?」
心配そうにしてくれていたけれど、他の子の呼ぶ声に振り返った背をいってらっしゃい、と送る。
「大丈夫そうだったら来てくれよな」
「うん」
「行ってくる!」
あっという間に遠くなる背中をぼーっと見ていると、隣から同じように視線を感じた。……蕗口かな。いつ座ったのか、気づかなかった。そのまま気づかないフリをしてみる。
「目洗いに行くんじゃなかった?」
「行くよ」
普通に話しかけられた。というか、桐嶋とのやりとり見てたんだな。付いて行くって言われたら困る。
「じゃ、行こう」
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