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開いたドアの向こうには、最初に歓迎の挨拶と説明をしてくれた施設のお兄さんが立っていた。 名前の確認をされたので肯定してとりあえず招く。手に救急箱らしきものを持っているので、桐嶋か蕗口が呼んでくれたのだと判断した。 「君の友達が眼帯持って行ってやってくれって。怪我したのかな?」 「いえ、充血程度です」 「そうか。でもね、目は怖いからね」 ちゃんと消毒しよう、と促されさっきまで座っていたソファに並んで腰を下ろす。お兄さんは手をアルコール消毒してから膝に置いた救急箱を開いてガーゼと眼帯を取り出し、そこではたと手を止めた。落としていた視線が俺へ向く。 「君、普段眼鏡かけてる?」 「はい、かけてます」 「だよね。鼻当ての跡が残ってる」 くすくすと笑いながらお兄さんはまた視線を戻し、ガーゼと眼帯を戻して別の眼帯を取り出した。 「これね、貼るタイプ。眼鏡の邪魔にならないよ」 一旦それを救急箱の蓋の裏に置き、更に洗浄綿、目薬と追加で置いた。救急箱は蓋と本体が金具で片側が固定されていて、手前から奥へ繋がったままひっくり返るように開く形。木製でしっかりしているので倒れることなく蓋の裏を台代わりに使えるらしい。 「あの、お借りできれば自分でやります」 「まあまあ、そう遠慮せず」 袋を開封する音に慌てて申し出たけれど却下され、ちょっと失礼するね、と前髪を避けられる。 「左かな?そのまま閉じててね」

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