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昔を知っている太朗くんは、俺がこうしている理由が分かるから何も言わない。
「太朗くんは、ここで働いてるんだ?」
「そう。バイトしてる。シフト入れてて良かったよ、まさかゆうの学校が来るなんてな」
ぺりぺりぺり。包装を剥がす音が響いて、左目に眼帯が貼られる。目を開けていても視界が暗いっていうのは変な感じだ。
「前髪もわざとだよな?極端に視界が狭くなってるから、動くときは慎重に」
そう言って太朗くんは、試すように俺の左側で手を振るような仕草をした。二の腕から先が見えないので、音や空気感での判断。分かった、と返すと同じ手で頭を撫でられる。落ち込んでいる時、こうしてよく撫でてもらっていた。
「でも大丈夫なのか?」
「なにが?」
「見たとこ男子校だろ」
「うん?」
何を言いたいのかいまいち分からない。男子校だと問題でもあるみたいな言い方だなあ。
「ゆうは男女問わず好かれるけど、エスカレートしやすいのは男じゃないか?」
「そうかな?」
他人事のような言葉が出てしまって、太朗くんが眉をひそめるのが分かった。性別も年齢も特に気にはしていない。外見で気になるのは知人か見知らぬ人か、だ。でもそういえば「彼女を奪った」って理由(事実無根)で恨まれたこともあったから……そういう意味ではそうなのかもしれない。と、そのまま答えたら微妙な顔をされた。
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