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「それは……」  何を言おうとしたのか、蕗口の言葉は続かなかった。考え込むように目線はまた合わなくなる。  その間に2回失敗して3回目でようやくかけられた眼鏡。そのレンズの向こうに、スタッフさんや男たちをすり抜けてこちらへ向かって来る太朗くんが見えた。 「蕗口助かった、ありがとう」 「いや……」  支えてくれていた肩の手をぽんぽんと叩き、もう大丈夫だと離れる。ちゃんと立てるし足は震えてないことを確認したところで、ちょうど太朗くんが合流する。 「2人ともありがとうね。女の子はうちの女性スタッフと男性スタッフとで送って行きました。安心して良いよ」  落ち着いたことを知らせてくれて、蕗口に視線をやる太朗くん。 「手、出さなかったの偉いね。先生には報告しておくから、君はもう戻ってお休み」 「侑哉は……」 「彼は眼帯貼り直さないと」  苦笑した太朗くんの言葉に、そもそものコテージを出た目的を思い出した。そうだった、眼帯張り替えてもらいに来たんだった。 「送ってあげたいんだけど、彼らも事務所に来るから、その前に済ませたくて。悪いね」 「いえ……。じゃあ、よろしくお願いします」  彼らとは騒いだ男たちのことだろう。納得した蕗口は素直に頷いて、一瞬俺の方を見てからコテージへと戻って行った。 「さて……、とりあえず戻ろうか。宗弥くんに留守番お願いしてるし。ゆう、歩ける?」 「うん」 「来るの遅れて悪かったね。よく耐えた」  背中に添えられた手が温かくて、ひどく懐かしい。

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