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歩きながら、背中の手が微かに上下に動く。あやされている。
「良い友達ができたな」
蕗口は友達と言って良いのかな。悩んだけれど、ややこしくなるし素直に頷いた。まだ「止める」とか「飽きた」とは言われていないので良しとしたい。
「まあ昔から友達は多い方だったもんな」
「そうかな」
つまらない、そう言って離れていく人も多かったからよく分からない。特に小さい頃は興味の移り変わりが激しいものだから。昔を思い出そうとしていると、不意に太朗くんが覗き込んできた。
「あのさ、さっき何か言われた?」
「何かって……」
「目のこと。俺の気のせい?」
「あー……」
どうして分かるかなあ。自分でさえ分からないようにしていたのに、無意識に無かったことにしてしまおうと。
「……褒められたよ」
「ああ、そうか……そうなんだな」
気持ち悪いより、怖いより、「綺麗」がだめだった。それは何より反動が大きい。だから太朗くんは、裸眼の時の俺を直接的な表現では決して褒めない。
「……たぶん、ゆう自身に言ったんじゃないか」
太朗くんが前に向き直り、立ち止まっていた足を再び動かす。
「彼女、力ではどうしようもなくて、諦めてしまおうかと思っていたって。でもゆうが割って入ってくれたから、そうせずに済んだ、ただただ感謝してる、そう言ってたよ」
「……うん」
「頑張ったな」
肯定するように、追い風のように、太朗くんは何度も背を撫でてくれた。
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