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 動じない健助と、苦笑する蕗口。 「そんな急がなくても、まだ時間あるでしょ。みんな待とうよ」 「そっか、そうだな!待つか~」  蕗口の言葉に頷いて、桐嶋は金剛先生の隣の切り株に腰掛けた。先生が「そこ座るの?」って顔をした後、満更でもない感じで笑う。意外にも慕われるのは悪くないらしい。 「堰はここ座るか?」  なんて思っていたら先生の膝を指してそんなことを言われる。分かりやすくからかわれている。素直に断っていいのか、一度ぐらいふざけ返してみるべきなのか。迷っていると、すっと蕗口が先生と俺の間に入ってきて少し乱暴にその膝に座った。 「生徒と戯れたいなら俺が乗ってあげますね」  庇ってくれたんだろうか。うーん硬い、とこぼす蕗口に驚いた先生は、少しの間固まった後で彼の肩をゆるく押し返す。 「冗談が通じない奴だ。重いよ高身長」 「冗談でしたか、なるほど」  ははは、と笑いながら降りずに長い脚を組んだのがツボに入ったのか、健助がフードを引っ張って口元を隠したのが分かった。 「宗弥、笑ってないでなんとかしろ。クラスメイトだろ」 「……知りませんね」 「あれ半分本気ですからね先生」  ひどいでしょ、と蕗口が肩をすくめた。  5分後前川と現れた西岡が蕗口の上にダイブ、便乗とばかりに桐嶋が加わって雪崩が起きたのだった。

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