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眠らないよう目を開けたまま横になった状態でしばらくして、静かになったコテージの外から話し声が近づいてくるのに気づいた。どうやら先生たちが見回りに来たらしい。一直線に向かっているようで、もしかすると中まで入ってくるのかも。と、案の定鍵の開く音が聞こえたところではっとした。蕗口に手を握られたままだからだ。これは、見られたら少し恥ずかしい。
「ここは……、9人部屋か」
「見たところ電気は全部消えていますね」
2階の寝室に声が近づいてくる。慌てて手を引っ込めようとするけれど、がっちり握られていて抜けない。
「蕗口」
返事はない。ちらちらと懐中電灯の明かりが隙間から見えてきたところで、俺は諦めて力を抜いた。誤魔化しで寝たふりをしようと目を閉じる。がちゃりとドアが開く。
「みんな良い子で寝てる」
小声で呟いたのは現国の先生かな。寝ている俺たちを数えているもう1人はたぶん、金剛先生。鋭い金剛先生のことだ、繋いだ手を見てなにか誤解されないだろうか、と変な心配をし始めると、それを止めるように腹と足に重みが乗っかった。寝返りを打った桐嶋の足と、寝ぼけた(?)健助の手だ。その手は弟くんを寝かしつけようとしているのか、代わりに俺の腹を優しく叩いている。
「随分とかわいい寝方しちゃってまあ……」
おかげで仲の良いグループとして認識されたみたいだ。
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