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ある程度の広さがあり、テーブルやイスも備え付け、普段から開放されている部屋もあるけれど、貸切にすることもできる。テスト勉強にぴったりな談話室は校舎のほか各寮にも用意されていて、生徒が貸切る形で使用するには校舎ではいずれかの先生、寮だと各寮長か副寮長の許可が必要になるものの、特に難しい条件はなかったはず。ただしタイミング的には他の誰かに先に押さえられる可能性があるかな。
「うちの寮長に聞いてみるよ」
「あ、俺も行っていい?」
蕗口は萩寮だ。萩の寮長といえばオリエンテーリングの終盤で協力してもらった三坂寮長。タイミングがあれば挨拶したいと思っていた人だ。
「別にいいけど……桐嶋も来る?」
「行った方が良いやつ?」
「いや、全然」
じゃあ行かない、ときっぱり桐嶋は断った。今は部活もあるし、他寮の生徒がぞろぞろ行ってもびっくりするだろうしね。
「了解。じゃあ侑哉、放課後行こう」
「分かった」
頷いたところで予鈴が鳴り、蕗口が立ち上がる。座っていた席の本来の主がじとーっと目で訴えかけていたことに気づき、彼はぱちんとウインクを投げた。
「ごめんごめん、お返しします」
「ぐわぁ!油断した……!」
まともに正面から受け取った相手は赤面し、文句の一つも言うことなく顔を覆った。恐ろしいな、蕗口。
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