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「侑哉もあんな冗談言うんだ、と思って。意外にそういうとこあるよね」
「どういうとこ……」
恥ずかしいし用は済んだと自分の寮に帰ろうとしたら、ちょっと寄ってかない?と蕗口の部屋へ誘われたことを意外に思った。
今まで萩の寮へ来ていないというのは、蕗口に誘われないというのが要因の一つにある。むしろたぶん遠回しに遠慮されている。今回誘ってくれたということは、あまり他の人に聞かれたくない話がしたいのだろう。
「じゃあ、お邪魔しようかな」
頷くと、蕗口はほっとしたように頷き返した。
「こっち」
案内されるままついて行く。彼と歩いているとよく不思議そうな目を向けられるのだけど、ここではそれが顕著だ。人当たりが良く見た目も華やかな蕗口と地味な俺とでは、そうなるのも無理はない。良いのか悪いのか、その視線に俺は安堵していた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
部屋に入ると、そのドアを蕗口は遠慮がちに閉めた。
区切られた左右のうち、豪快に開け放たれたアコーディオンドアの先の方は蕗口の同室者のものらしい。今は不在のようだけど、何も隠すものなどない、といった堂々とした様子に西岡の顔が過ぎった。彼もこんな感じな気がする。
それとは真逆にきっちり閉じられたアコーディオンドアを開き、蕗口は自分のテリトリーへ俺を招き入れた。一瞬ためらってから入り口へ近い位置に腰を下ろすと、ぎりぎり手が届かない距離を取って蕗口も奥へ腰を下ろす。やっぱり気を遣ってくれている。
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