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「先輩の話なんだけど」 「うん」  先輩というのは無道先輩のことだ。呼び捨てても誰も咎めないようなことをされたけれど、それを知るのは限られた人間だということと、年上であることに変わりないので先輩と呼んでいる。 「来週復帰だって」 「……みたいだね」  ちょうど今日授業の合間に生徒会長に呼び止められて聞かされたところだった。忙しい合間を縫って探してくれたらしく、すぐさま用件に入ると何度も「些細なことでも何かあれば必ず報告するように」と念押しして早足で会長は離れて行った。  ところで当事者の俺が知らされるのは当然として、蕗口が知っているのはなぜだろう。 「なんで知ってるの?って顔してる。本人からじゃないよ。これは別ルート。って言うかあれ以来まじで連絡取ってない」  疑ったわけではないし、なんだったら別ルートの方が気になってしまうな。蕗口の顔の広さがよく分かる。ただ掘り下げることはせずに頷いた。 「うん、分かってる。……仕掛けてくると思う?」  どう考えてもあのまま大人しく反省してくれるタイプではないので何かしらの報復は覚悟している。だけどそれが謹慎明けすぐのタイミングかと言うと、さすがにそれは短絡的過ぎる。 「馬鹿ではないから様子見期間はあると思う。ただめちゃくちゃ気が短いからいつまで保つかは分からない」  蕗口も大体同じ意見だった。結局、いつ何があるか分からないからできるだけ一人にならない、っていうのが今のところの最大の防御だ。

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