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「クラスも違うし寮も違う。側に居れなくてすごい歯痒い。他に事情知ってて見守ってくれる人、誰か居ない?」
ため息混じりにそんなことを言われ考えてみるけれど、事情を知ってるのはあの場に居た蕗口と安佐凪会長、根津先輩、それと金剛先生だけだ。可能性があるとするなら根津先輩だろうか。たぶん、お願いすればある程度は聞いてくれるとは思う。ただ……、と黙り込んだ俺に、蕗口は深妙な顔になって付け加えた。
「ちょっと気になることがあるんだよね」
「気になること?」
その時、がちゃりとドアの開く音がして蕗口と同時にそちらを見た。同室の人が帰ってきたらしい。
「ただいまー」
明るい声がしたので、つい「お邪魔してまーす」と返したら、はいはいどうぞ、と軽い調子でカーテンをしゃっと閉めてすぐ開け戻したのが分かった。
「えっ?!蕗口くんが連れを入れてる……?!おおお邪魔しました……!」
「どうして?!」
お邪魔してるのは俺の方ですけど!そのまま出て行きそうな勢いだったので慌てて引き留めた。蕗口がこちら側のカーテンを少し開けて、「良いから」と一声かけると、さっきと比べてあまりに元気のないレール音が、からからと鳴る。
「俺のことは気にせずどうぞ!」
しばらく何かを探すような物音が続いたあとわざとらしく音楽が漏れ聞こえ始めたから、たぶん勘違いをしているなあ。
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