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「気にするしたぶん思ってるのと全然違うよ?」  同室の彼にもう一度声をかけてみる。 「なんにも聞こえてません!大丈夫!」  うん、大丈夫じゃなさそう。困って蕗口に視線を投げると肩をすくめることで返された。  愉快そうな人なので話してみたかったけれど、残念ながら今の様子じゃ難しいだろう。誤解を解くのは蕗口に任せよう。話の続きもなんとなくし辛くなってしまったので、来たばかりだけど藤寮に帰ることにした。立ち上がると蕗口も立ち上がる。 「送ってく」 「ありがとう」  素直に好意を受け取りつつ、そう言えば思い切り反抗していた彼は大丈夫なんだろうかと心配になった。あの時電話越しでも引くぐらいに先輩が怒って暴れていたはずだ。全く何もないとは考えにくい。 「蕗口は大丈夫なの?」 「俺?大丈夫、身内だしその気になればいつでも手出しできるから後回しにするでしょ。俺より自分の心配してよ」  それは大丈夫とは言わないのでは。ただ体型的にも情報量的にも、蕗口より自分の心配をした方が良いのは確かだ。俺はあの人のことをなにも知らない。ひどく支配的で暴力的だということぐらいか。 「分かった。でも蕗口も危険を感じたら絶対に声かけて」 「ん、そうする」  少し意外そうな、でも嬉しそうな表情をしていたのが印象に残った。もう友達なんだから心配するのは当たり前だよ、と言ってあげれば良かったかな。  結局何でもない雑談をしながら送ってもらい、気になることがなんだったのか、聞けないままでその日は別れた。

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