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「ね、根津……!」 「うわーん!良いとこだったのにー!」  出てきたのは2人で、目に入ったその姿に驚いてしまった。2人とも着衣の乱れが激しい。ほとんど羽織っただけ、手で押さえただけのその状態で走って逃げて行く。 「今の……」 「空いたぞ」  空いたというか追い出したのでは。表情も変えず彼らに一瞥もくれないで、根津先輩はさっさと部屋に入った。オリエンテーリングを思い出して、たぶん同じ人ではないな、なんてあまり意味のないことを考えながら俺も続く。  中はなんとなくこもったような匂いがして居心地が悪い。床のところどころがなぜか湿っている。考えないようにして、乾いた所に腰を下ろした。 「悪いな。聞かれたくないだろうと思って」 「無道先輩のことですよね」 「……ああ」  “先輩”を付けたからか、根津先輩の機嫌が少し悪くなってしまった。付ける必要なんかない、そう言われるかと思ったけれど特に触れてこず、先輩は頭をがしがしと乱暴にかいた。 「聞いただろうが、戻ってくるんだとよ」 「そうですね」  このやり取りも3度目だ。1ヶ月というのは最初に決まっていた期限なのでそれについて俺が思うところはないんだけど、根津先輩はそうじゃないみたいだった。ただの肯定で返したことが気に入らないらしく、眉間に深い皺が刻まれる。 「文句の一つもねえのか?」 「えっと……はい。決まってたことなので」

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