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 少し待ってみたけれど解放されないどころかぎゅっと握られたので、慌ててもう一度頼み込む。 「あの、本当に手汗ひどいので離してもらえませんか」 「別に平気だけど」 「俺が嫌です」  うはは、と先輩が声を出して笑う。何がしたいのかはよく分からないけど、今日は本当によく笑う。からかわれてるんだろうな。楽しそうだからまあいいか、と思ってしまった。 「宗弥はこのことは?」 「言ってません」 「なんでだ?」  あの日保健室で肌を晒した時の、すぐにでも殴りに行きかねない雰囲気の健助を思い出すと、とてもじゃないけど言えない。大事になって彼の素行に傷をつけるようなことはしてほしくない。 「……知られたくないので」  無難な答えに先輩はそうかと頷く。 「あいつなら言えば朝から晩まで側に居そうだと思っただけだ、気にするな」  クラスも違うし、さすがにそこまではどうだろう。なんだかずっと一緒にいるように思われてるみたいだけど、割と別行動だし、健助はいつの間にか居ないことも多い。 「しばらくは放課後もテスト勉強で友達複数人と一緒なんで大丈夫です」 「テスト勉強な……」  そこで先輩は少し考える素振りを見せた。なんだろう、勉強見てくれるとか? 「教えてくれるんですか?」 「いや、それはない。お前と宗弥はともかく、俺を怖がるやつも居るだろ」  確かに、と頷くと、先輩は斜め上を見ながらぼそり「居ないよりマシか」と呟いた。 「当てはある」

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