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 2日目も3日目も何も起こらず過ぎていった。蕗口や野中先輩によると、無道先輩は比較的大人しく過ごしているらしい。今のところ。だからといって気も抜けず、俺はいつも誰かと行動を共にしていた。一人なのはトイレと風呂ぐらい。  健助のことも彼があまりに普通なので、次第に俺の動揺も収まってくれた。……家族と同じように思ってくれているなら別に大袈裟なことじゃない、俺だって家族の前では素顔を晒すし、たぶん深い意味はなかったんだろうと思うことにしている。  その間気になることといえば不思議なことにいつどこのトイレに入っても個室が必ず一つ使用されていて、中から聞こえてくるうめき声がいつも同じだったこと。先輩に関係してるとは思えないけれど、悩み事でもあるのか腹痛なのか、姿も知らない彼が段々心配になってくる。 「大丈夫?」  と、ある時聞いてみた。中から返事はなく、うめき声がぴたりと止んだ。悪いことをしたかもしれない。  それぐらい平穏な中で事件が起きたのはテスト初日の前日だった。  いや、事件というほどでもなくて、実際にはまだ何も起きていないと言っても良い。 「夜中に外から見られていた?」 「うん、言おうか迷ったんだけど……」  夜、目が覚めたらカーテンが少し開いているのが気になって閉めるために窓に近寄ったら、下からこちらを見上げている先輩が見えた。向こうから俺が見えたかも謎で、特に何かされたわけでもなくすぐにどこかへ行ってしまった。そもそも俺が寝ぼけていた可能性だってある。 「いや迷わず言ってよ」  それでも蕗口は真面目に聞いてくれて、「部屋でも一人にならないで」と真剣な顔で言った。

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