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 部屋に戻るまでの間、健助は何も聞かないでいてくれた。彼はいつもそうだ。聞いてほしいことは口を挟まずしっかりと、そうでないことは余程でなければ俺が口に出すまでそっとしておいてくれる。ただいつでも聞いてくれる姿勢がある。だから側に居ると安心するんだろうな。  萩の寮に入って隣を歩き出した健助をちらりと見るとちょうどこちらを向いたので、小声で「ありがとう」と伝えた。 「大丈夫なのか?」 「今のところ」  健助が何かを言いかける。けれどそれより早く桐嶋が勢いよく振り返った。 「俺も明日はできる気がする!」 「僕も今回は自信があります」  だから、褒めて! と2人は目を輝かせている。随分盛り上がっているなと思っていたけど、一体なんの話をしていたの? 「今から褒めるのか」 「そう!褒めの前借り!」 「なにそれ」  面白いことを言うなあ。それでやる気が出るのなら、と2人の頭を撫でた。 「えらいね、よく頑張った。さすがやればできる子!」  自分から言ったのに葉桜が本気で照れているのがかわいい。褒められて嫌な人ってあまり居ないよね。健助にも、と思って横を見たらもう既に頭を差し出してきていて笑ってしまった。こういう時とても素直だ。 「よしよし、えらいえらい。いつもお疲れさま」  その後全員から俺も褒めてもらった。

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