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「……なにやってるの」  声に振り返る。そこには腕を組んでこちらを見ている蕗口。なんだろう、怒ってる? 「えっと、褒め合いを……」 「なにそれ。遅いから見に来てみたら全く…………俺もやって」 「あはは」  羨ましかったみたいだ。ぽんぽんと頭を撫でるとキャンプの時照れていた彼がフラッシュバックしたけれど、今回はそんな様子はない。不意打ちじゃないからだろうか。今度試してみよう。 「で、何かあった?」  談話室まで戻ったものの、ジュースを買った時のことをどのタイミングで報告しようか、と図っていたのが顔に出たらしく、蕗口が小声で聞いてくれた。ようやく蓋を開けた炭酸ジュースを一口だけ飲んで、同じく小声で答える。 「外に先輩が居た」  今回もそれだけだというのは桐嶋と葉桜の様子で分かるだろう。何もない方が良いのに、じわじわ首を絞めるような回りくどさにいっそ早く行動してくれと願ってしまいそう。同じことを考えたのか蕗口がほんの少し表情を歪めた。 「消耗戦なんて柄じゃないでしょうに」 「……勉強しよう」 「だね。ってことで侑哉はずっと同じページ開いてるけどそこ分からない?」  ぱっといつもの笑顔に戻って、蕗口は俺に勉強を教えてくれる。集中できないと言ったら心配させるだろうから、分からない振りをした。 こんなことじゃ結局あの人の思う壺じゃないか?

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