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「ただのバカの割にこいつが随分気に入ってんじゃねえか。一体なにしやがった?」 「見張られて怯えてただけですけど」 「嘘だな」  弱みを握れって蕗口に指示していたのは自分じゃないか。なんで疑うんだ。 「平凡な俺になにができると?」  心からの言葉だ。饒舌だった先輩がそこで無言になって不安が湧いてくる。  切り替えてこの隙に向こうの様子を探ろうと耳を澄ましてみても、頼りになるような音は何も聞こえてこない。静かすぎる。どこに居るんだ? 「……こいつを丸め込んだだけじゃなく、根津の野郎も動かしたのが腑に落ちねえ」 「それはたまたま……」  突然根津先輩の名前が出たことに驚きつつ事実を言おうとしたところを、吐き捨てるような短い笑い声が遮った。 「平凡? 笑わせる。ゴミのせいで停学食らったなんざ認めねえぞ」  そんなことを言われても。そもそも自業自得じゃないか。ゴミ呼ばわりはともかく、俺のせいにされたのは納得がいかなかったけれど口にはしなかった。あとたぶん、健助の方が怒ってくれている。 「お前の周り全部潰してやる」 「止めてください。今度こそ警察沙汰になりますよ」  こんなに堂々と脅迫するなんて呆れた。でも、そろそろ本題かな。 「止めてやっても良いぜ。その代わり、大人しく俺の前に出て来い」

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