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嫌です、と反射的に言いそうになって、押し止まった。大人しく言うことを聞く振りをしておいた方がたぶん良い。
「どこに居るんですか?」
「侑哉」
心配する健助に大丈夫、と小声で返して先輩の答えを待つ。
「なんだ、断ると思ったがやけに素直だな」
どうでも、と言うよりどちらでも良さそうな興味のない声だった。俺の意思は初めから関係ないってことか。
「そのうち迎えが行く。それまでせいぜい大人しくしてろ」
そうして静かに通話が終わった。蕗口の無事ははっきりしないまま。すぐに折り返したけれど、「おかけになった電話は電源が入っていないか電波の無い所に……」とお決まりの機械音声が流れて落胆する。どこに居るのかも教えてはもらえなかったし、探しに行こうにも宛がない。
物音がしない静かな場所……敷地の端、裏の公園、テスト期間中だから校舎の方も人が少ないし、十分あり得る。静かというだけでは該当する場所があり過ぎる。
「侑哉」
なんとか絞り込もうと考えていたら名を呼ばれ、体を離した健助に正面から見つめられる。もしかして何回も呼ばれてたのかもしれない。
「ごめん、考え事してた」
「あいつなら自分でなんとかするだろう。大事にも、したくないはず」
「そうかもしれないけど……」
「……行くのか?迎えが来たら」
「うーん、状況による、かなぁ」
本当は行きたくないけど、まずその時に選べる状況だとは限らない。行かないようにするより無事に帰って来れるように対策しておくべきかもしれない。
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