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 その前に。野中先輩は幸い紙を貼られただけで実害はなかったけれど、かなり近い接触があったのは明らかなので慌てて葉桜や他の勉強会参加メンバーの無事を確認した。特に問題は起きてないようだ。  見方を変えれば先輩の背に貼られていたこの紙は「下手に動けば周りに危害が及ぶ」という警告とも取れる。となると先生に報告はできない。生徒会長も難しい。  でも警告があるだけまだありがたいなと思う。根津先輩へ連絡する時間や健助と相談する猶予があるんだから。 「とにかくちゃんと頭も体も動けるように早く寝てご飯をしっかり食べる」  一通り対策を考えてそう締めくくった。茶化してるようだけど真面目に大事なことだ。できることは少ないけれど、いざと言う時は結局瞬発力が要になる。 「そうだな」  健助も笑ったりせず同意してくれた。  不安は残りつつもしっかりベッドに横になるとその夜は何も起こらず、あっさりと翌日を迎える。  朝になっても動きはなくやっぱり集中しきれなかったけれど、1時間目のテストを終えたところで健助から蕗口無事の報せが届いて、ようやく少し落ち着いた。本鈴ぎりぎりに教室に入って来てテストを解き終わるとすぐ出て行ったらしい。見える範囲では怪我もなく、顔色も悪くはないとのこと。その日はずっとそんな感じになったようだ。勉強会も中止なので直接蕗口の様子を見れないまま。  少しだけ話せたという健助によると、蕗口はわざと俺たちを避けてるみたい。これ以上あの人が興味を持たないように。携帯はとられたか壊されたかで使えず、連絡はできないけど無事だって。 「だから自分のことだけ考えて」  と言っていたらしい。

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