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校舎のつくりはそんなに複雑ではない。方向音痴の俺でも見ずに歩いてもなんとなくの場所ぐらいは分かる。それなのに袋に意味はあるのか、と考えたのが分かったかのように、その場でぐるぐると回らされた。2回ぐらいでもう右も左も分からない。無念。
「来い」
ふらふらになった俺の腕を掴んで歩き出す迎えの人は少しも気遣ってくれる様子はなくむしろ早歩きで、油断すると足がもつれてこけそうになるし、曲がり角で壁にぶつかる。これも仕返しの一部と言われれば信じた。
しかし早歩きの割に一向に目的地には着かない。むしろ階段を上ったと思ったらしばらく歩いてまた降りたりを繰り返していて、もしかしたら体力を削りたいのかもしれない。救いは階段の時は一応声をかけてくれることだ。そうじゃなければ着くまでに血だらけになっていたと思う。
「もう良いか……」
そのうちに先に息を切らし始めた迎えの人が諦めたように呟いたので、ここまでらしい。
そろそろ健助は気づいてくれたかな。
「遅かったじゃねえか」
ようやく立ち止まった先で聞いた第一声に鳥肌が立ったことに自分で驚いた。怒りと恐怖と不快感。
「取っていいぞ」
そう言われて躊躇う。なんだろう、嫌な感じ、嫌な予感がする。視界を確保したらすぐに逃げ出したいと感覚が言っている。
「おい」
迷ったのは5秒ぐらいなのに、焦れた先輩に急かされ誰かに強引に袋を剥がれた。眼鏡のずれと蛍光灯の明るさに目を伏せたのは一瞬で、はっきりした視界の中で無道先輩以外の知ってる顔を見つけて奥歯を噛んだ。
項垂れた蕗口が居た。
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