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 意識が無いのか、ぐったりと部屋の角に座らされている蕗口。 「蕗口!」  呼んでも反応はない。しかも健助は目立つ外傷は無かったと言っていたのに、目の前の彼は頭から血が流れているように見える。 「蕗口になにを……!」 「しー。でかい声出すな。寝てるだけだ」  慌てるほど先輩の機嫌が良くなるように感じて、一旦息を呑んだ。それから今自分がどこに居るのか理解する。オリエンテーションの再現なのか、あの時襲われた部室に連れて来られていた。校舎を出ていたなんて気づかなかった。 「懐かしいだろ? あん時の続きをしようぜ」 「……続きなんてありませんよ先輩。仲良く話でもして帰りましょう」 「話? 良いぜ。あん時も今も、ゴミの分際でなんで落ち着き払ってられんのかとか」  落ち着いてるのが気に食わないから屈服させようと恥辱や恐怖を与えられるのなら慌てふためいて見せた方が良いのかとも思うけど、たぶんそれはそれで喜んでもっと酷いことをするタイプなんじゃないかと思う。加虐的というのだろうか。 「招待状をくださったので心の準備ができました」 「体もだろ」  セクハラか。風呂上がりを狙ったのは自分じゃないか。 「まあとにかく、座れ」  できる限りすぐ動ける体勢を保って会話を引き伸ばしたかったけれど残念ながらそんなテクニックは持っていないし、蕗口が居たことや校舎ではなく部室棟に連れて来られていたことに結構動揺してしまって、割と頭が真っ白だった。背後に感じる気配を、振り返って確認する余裕もないぐらい。  下手に動いたら蕗口がどうなるのか分からないこともあり、反抗心はないことをアピールするためにも大人しくイスに腰を下ろした。

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