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「で? 何話す?」 「え?」  従ったとはいえすぐにでも胸ぐらを掴まれるんじゃないかと考えていたから、普通に話し始めようとしたことが意外すぎて聞き返してしまった。 「えってなんだ? お前が言ったんじゃねえか、話でもしようってな」  確かに言ったけれど、短気ですぐに暴力に訴えるような人が本当に受け入れるとは思っていない。ただ気まぐれからくるものだとしても、俺にとっても都合が良い。 「聞き間違いか?」 「じゃないです。話しましょう」  にやけたままの顔を見るに、いくら時間が経とうが助けなんて来ないと決めつけているんだろう。だから少し時間をかけて、はじめに怪我をした蕗口を人質として連れてきて脅しをかけておいて、今度は会話で平和的だと安心させたところを絶望にでも落とすつもりか。でもそうはいかない。 「中間はどうだ」 「……おかげさまで」  いかにも学生らしい会話なのに、妨害している張本人からの問い掛けは嫌味を通り越してシュール。 「先輩のいとこが良く教えてくれるので」 「あ?」 「頭の良い家系なんですか?」 「くそ白々しい。もっとうまいこと喋れよ」 「……せめて蕗口の手当てを」 「寝てるだけだっつってんだろ」  白々しいのはどっちだ。どう見ても意識が無いし血が出てるじゃないか。蕗口に視線をやると、その首を見せしめのように片手で乱暴に掴んで先輩が続けた。 「こいつは都合の良い手足だった。減らず口を叩いても反抗することはなかったのに、お前は何をした?」 「何も」 「ヤったのか?」 「まさか」

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