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 吐き出そうにも、口いっぱいにペットボトルを突っ込まれた挙句に鼻をつままれてとても無理だった。呼吸もろくにできないし、生理現象で液体を吐き出そうと逆流させる喉の動きで余計に苦しく、知らないうちに目に涙が溜まっていく。5分ぐらいに感じたけれどたぶんせいぜい20秒、ようやく空になったペットボトルが口から外されて、酸素を取り込もうとして盛大に咽せた。 「ごちそうさまはどうした? 行儀が良いで通ってるんじゃねえのか」  反射的に起き上がろうとする俺の肩を押さえ付けながら、先輩はお笑い番組でも見るような様子でこちらを見下ろしている。  文句も言えずしばらく息荒く咳き込むことしかできなかった俺は、中身が加糖飲料だったのか顔も髪もシャツも次第にべたべたしてくるのが分かって一気に不快感が増したし、鼻にも逆流していたようで飲料なのか鼻水なのか分からないものでずるずるだ。おまけに酸欠で麻痺していたのが戻ったのか、床や椅子の背もたれでぶつけたあちこちが痛み出した。 「なにを、飲ませたんですか」 「あんだけ飲んで分かんなかったのか?」  あの状況でラベルを見る余裕もなければ味なんか分かるわけがないし、意味合いが違う。わざとだろうけど。 「害のあるもんじゃねえよ。むしろ体に良い」  見せられたペットボトルのラベルにトクホのマークを見つけて、健康飲料をこんな使い方するな、とよく分からない怒りが込み上げた。 「満足ですか」 「全然」  水責めっていう割とシンプルな拷問では満足できないらしい。

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