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 溺れて咽せている間十分愉しそうな顔して見下ろしていたのに。今も小さく咳き込み続ける俺を押さえつけたままだ。  とりあえず眼鏡だけでも水滴の跡が付く前に拭きたいところだけれど、今の体勢で裸眼になるのもリスクが高い。 「その手退けてもらえませんか」 「やなこった」  試しに手首を掴んで外そうとするも、重力と単純な力の差で負けている。片足が椅子にかかったままの下半身を捻ってその反動で抜け出そうとすると、浮かせた足を捻る前に掴まれ、逆に強引に上半身を押さえつけるように折り込まれた。更にその上に先輩の足が乗り、先輩と自分の足の重さで内臓が圧迫されて呼吸が浅くなる。 「中々良い格好じゃね」  うん、確かに結構恥ずかしい格好にされてしまった。腕も巻き込まれて余計に身動きが取れないし、地味に椅子の背もたれが食い込んで痛かった。風呂上がりでゆるめの部屋着だったので、汚れても平気なのとズボンが破れたり食い込まなかったのが不幸中の幸い。 「相変わらず澄ましやがって」  痛いし苦しいし不快で決して澄ましてはないと思うんだけどな。泣いて喚くレベルじゃないと澄ましてる認定を受けてしまうのか。 「退いてください、苦しいです」  正直に言ってみたけれど圧迫されていて声も出しにくかった。 「なんて?」 「退いてく、っ、ぅあ、はっ……」  今度は力を加えられたせいで息が洩れるような声しか出ず、体勢もあってなんだか喘ぎ声みたいになってしまい羞恥心を煽られる。絶対確信犯。

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