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抵抗らしい抵抗をできずにいると次第に圧迫感は薄れていった。
爪を立てた腕はいつの間にか逆に俺の手を絡め取っているし、喉を突く勢いだった口の中の指も何が楽しいのか舌先を挟んで擦るだけで、眠気で感覚が鈍くなっただけなのかさっきまでの乱暴さが消え、気味が悪いほど優しく触れてくるように思う。
しつこく押さえつけられていた足は退けられたものの、第三者が見たらさっきより誤解を与えそうな態勢になっている。けれどもう大柄な先輩を突き飛ばす力も気力も無く、それどころか胸を吸う微弱な振動に心地良くなってこのまま眠気に負けそうだった。眠気に抗うのがこんなに辛いと思わなかった。
「ふっ、んん……」
考える力も無くて、半分寝てしまっているのか手足が言うことを聞かないのでなんとかもう一度舌を噛んで目を覚そうとしたその瞬間、先に吸い付かれていたそこにやわく歯を立てられて思わず声を洩らしていた。
してやったりと顔を上げた先輩が、俺の口から指を抜き、そこで初めて気づいたようにマスクにそのまま引っかける。
「ぐちゃぐちゃだな」
ゴムが引っ張られ、蔓に引っかかって眼鏡が浮くのをただ見ていた。かしゃん、と落下音で我に帰り顔を逸らそうとしたけれど前髪を掴み上げられ眼鏡もマスクも無い顔を晒される。
「……お前……あー、そういうことか」
やられた!
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