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「お前、おもしれーな。まじで。意味分かんなくて」
目の前で大太鼓を鳴らされたような、体の中から音が響くような、強烈な動悸がひとつして、全身の毛穴から嫌な汗が噴き出る。この笑みを今まで何回浴びただろう。
「なんで隠してる?」
表面だけ優しい手つきで、顔にかかった髪の毛が払われる。そのまま頬を撫でられる。
「あいつが気に入ったのはこれだったわけか」
一瞬どきりとしてしまった。あいつとは蕗口のことだろう。でもこの人の言っていることは違うはずだ。蕗口は俺の中身を見た上ではっきりと好意を示してくれたんだから。
「虫けらのくせに俺から隠そうとしやがった、潰してやる」
「止めろ!」
気絶したままの蕗口に上半身ごと先輩の視線がいって、思わず服を掴んで制止していた。それが縋りつくように感じたのか、気分が良さそうな表情でまたこちらに向き直る。
「あいつのことは許してやっても良い。お前が俺に従うなら。もちろんお前にも優しくしてやるよ、堰侑哉」
頬を撫で、首を撫で、胸から腰を撫でて、ズボンに手がかかる。制服じゃないだけベルトの障害がない分、このまま下されたらおしまいだ。いっそこの場では取り入る振りをしてでも時間を引き延ばすべきかもしれない。意を決して彼の腕を掴んだ。
「待って」
「止めるのか? あいつがどうなっても良いと?」
「……違います。先に、俺が……」
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