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「お前が?」  まんざらではない様子に嫌気が差しつつも、延命された気分になった。 「先輩を……」  唾液を飲み下すのと一緒に色んなものを飲み込んだ。仕方ない。やられるよりはマシだ。腹を括って手を伸ばす。 「侑哉から離れろ!」  だけどその手が触れるより先に誰かが叫んだと思ったら、先輩がいつかと同じように吹っ飛んで目の前から消えた。驚いて呆然としていると空いたそこに誰かが駆け込んでくる。 「侑哉!」 「蕗口……?」  さっきまで確かに気を失っていた蕗口が、助けてくれたらしい。少しほっとして、同時に心配になる。頭を怪我しているはずだ。 「何された?!」 「そんなことより傷は?」 「……こんなのかすり傷。掴まって」  そんなことと言ってしまったのが引っかかったのか一度むっとした表情になったけれど、すぐ起き上がるのに手を貸してくれた。ただ俺はともかく、やっぱり蕗口もふらついている。 「てめぇ良い度胸じゃねえか。おい抑えろ!」  先輩の怒鳴る声につられて出口の方へ目を向ける。見張りをしていたはずの誰かはそこに居なかった。隠れるような場所もないし、いつの間にか外へ出たのか?  なら今が逃げるチャンスってことだ。 「行こう!」  蕗口に腕を引かれて走り出そうとしたものの、足がもつれてよろけてしまう。背後から舌打ちが聞こえるのと、前から強く引っ張られるのが同時だった。

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