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先輩の最大の目的が俺のプライドをずたずたにすることなら、蕗口もただの人質ではなく、初めからこうするつもりだったのかもしれない。
裾を首を締めてる方の手で固定され、さっき噛まれていじられたそこを露出される。普段なら男同士だし別にどうってことないけれど、相手と状況が冷静ではいさせてくれず、異様に恥ずかしく感じた。
いじられて腫れたそこを指先で何度か弾かれて、耐えられず目を伏せた。それでも冷静でいようと爪を立て、唇を噛む。
きっと勘の良い蕗口なら、先輩の隙さえつけば察して動いてくれるはず。どこかで隙を……と待っていたけれど、再び手がズボンにかかって思わず助けを求めてしまった。
「健助……!」
がしゃん!
窓ガラスが割れるような音が響いて、先輩が後ろを振り向く。ほぼ同時で、蕗口の背後の扉が吹き飛びそうな勢いで開いた。注意が逸れた瞬間に俺は先輩の足を思い切り踏みつけ、蕗口が俺の首に巻きつく先輩の腕を捻り上げる。それでももう片方の腕が素早く腰を捕らえようとするのを2人がかりで阻止する。
殺気っていうのはこういうのなんだろう。開け放たれた入口からものすごい圧を感じて、全員そこで動きが止まった。
「後悔させてやる」
ゆっくりと入ってきた黒い影は、見覚えのあるフードを被ったシルエット。
「け、健助……」
呼んだら助けに来てくれたことへの安堵より、その雰囲気に圧倒された。見たことないほど怒っている。そのまま側まで歩いて来てこちらに一瞬目をやると、先輩ではなく、その腕を捻り上げている蕗口の手の方をなぜか離させた。
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