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「なんだおま」  困惑したのも束の間、長い足が上がったかと思うと先輩の側頭部に命中して、言葉を言い終わらないうちに先輩は昏倒した。受け身も取れず床に激突した明らかに意識のない彼に追い討ちをかけるように、健助は彼の股間を容赦なく踏みつける。 「おいおいおい!落ち着け!」  一瞬の出来事に呆気に取られていると、入口の方からまた声が入って来て健助を制止した。この声は根津先輩だ。 「気持ちは分かりすぎるが潰すと過剰防衛になるだろ!」  根津先輩の言っていることはもっともだし、すぎるが付くほど分かるなら本当は止めたくもないのかも。なんだか一瞬で気持ちがすっとした。  ところが聞こえていないのか健助は全く止める気配がなくて、さすがに焦って彼の手を掴む。 「健助、もう良いよ。もう大丈夫。ありがとう」  それでようやく彼の足が引いて、安心したのか急に力が抜けた俺は膝から崩れ落ちかけたけれど、健助が支えてくれて、そのまま抱き上げられた。恥ずかしさより安心感が勝って彼の胸に頭を預けると、今にも眠ってしまいそう。 「べたべたしてるから、汚れるよ」 「いい」 「約束通り、助けてくれたね」 「遅くなってごめん」 「蕗口を……保健室に……」 「分かった」  会話しているうちにどんどん眠気が増し、瞼を閉じると、健助の声と、体温と、心臓の音で自室のベッドの上ぐらい安心しきってあくびが出た。 「ごめ……睡眠……飲まされ……眠………………」  そこで完全に意識が切れた。

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