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「せんせ……」 「最初に言っておきますがあちこち打撲しているのでしばらく安静に! してください。分かりましたね?」  挨拶する間もなく開口一番釘を刺されてしまった。特に「安静」が強調されて、前回のことを踏まえて言っているんだなと分かる。これは結構、緋吉先生怒っているな。 「はい、すみません」 「謝る必要はないよ。でも心配性な先生のためにもう一泊していってくれるかな」 「分かりました」  断る理由もないので素直に頷いた。先生と話したいこともあるし、たぶん先生の方もそうだと思う。緋吉先生は満足そうに頷き返して、蕗口と健助に交互に視線を送った。 「君たちは一度戻って食事をとりなさい。特に蕗口くん、君も大事なかったとはいえ怪我をしているから、栄養をとって安静にね」  蕗口は保冷剤をもらって素直に丸椅子から立ち上がる。ふらついたりせずしっかりしているのを確認できて安心した。目は少し赤い。 「落ち着いたらまた話そう」 「うん。お互いとりあえず回復優先で」  苦笑いを交わした後で、またね、と言いおいて彼は出て行った。  健助は反対に一度俺の側へ来る。 「侑哉、スマホ返しておく」 「やっぱり盗られてたんだ。ありがとう」  健助と対策を練ったあの日、お互い位置情報の共有アプリをダウンロードしていた。だから本来ならもう少し早く見つけてもらえるはずだった。たぶん俺に袋を被せて連れ回したあの人が、気づかないうちに抜いてどこかに置いてしまったんだと思う。 「よく見つけられたね」 「協力してくれた人が居る」  誰だろう? 気になるけれど、食事の前に引き止めるのも気が引けるのでまた後で聞くことにしよう。

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